親の事業を子どもが受け継ぐことを事業承継と呼びます。
事業承継で、親の車などの資産を後継者である子どもがタダで借りていることがよくあります。
この親の車にかかる経費(自動車税や減価償却費など)が、
子どもの経費になることはわりと有名ですが、
子どもが家を離れている場合には、経費にならないものがあるのでご注意を。
タダで借りることを「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼びます
ただで借りることは、正式には使用貸借と言います(民法593)。
「ただで借りてます」で良いのですが、
覚えておくと便利です。
「賃貸借(ちんたいしゃく)」がお金を払って借りることなので(民法601)、
賃貸借の反対が使用貸借というイメージです。
借りているものが、たとえば車だったとして、
車には自動車税や車検費用などの維持費がかかりますよね。
この経費は、持ち主である親が払う場合もあるし、
子どもはただで借りているのだから、
せめて経費は出すよとなるかもしれません。
子どもが経費を払った場合でも、
それはお金を払って借りたわけではなく、
タダで借りている=使用貸借です(民法595)。
「タダで借りたものに払ったお金も経費になる」イメージです。
所得税の親からタダで借りたものの経費の考え方
個人で税金の計算をする場合を考えてみます。
一緒に住んでいる親からタダで業務用の車を借りている場合。
実は、所得税では、ここにも以前書いたように、
一緒に住んでいる家族に払ったお金は経費になりません。
親に車を借りてお金を払っても、なかったことにされます(所得税法56)。
その代わり、車にかかったお金は、子どもの経費にしてOKですし、
なかったことにされるということはタダで借りているのと同じなので、
実際にタダで借りている場合も、子どもの経費にしてOKです(所得税法基本通達56-1)。
これは、よく知られています。
タダで借りたものの経費が認められる前提は生活費が一緒であること
上記の決まりには、「生計を一にする(せいけいをいつにする)」家族
のあいだでのやり取りだ、という前提が書いてあります。
「生計を一」ってなに?という感じですが、
国は「日常の生活の資を共にすること」と言ってます。
要するに、生活費が一緒、ということです。
ということは、子どもが実家で親と一緒に住んでいる場合は良いですが、
「子どもはもう家を出て仕送りもないし、家計は別だよ」という場合には、
親からタダで借りている車にかかるお金は、
子どもの経費にならないことになります。
経費にならないのは、親が払ったお金と減価償却費
生計が別の場合に、
タダで親から借りた車に払ったお金で、
子どもの経費にならないものをまとめます。
✕ 親が払った自動車税や車検代は、経費にならない
✕ 車両の減価償却費は、経費にならない
○ 子どもが払った自動車税や車検代は、経費になる
子どもが自分で払えば、それは経費なりますが、
そうでなければ、ならないわけです。
大切なのは、減価償却費が経費にならない点です。
間違えやすいですので、気をつけましょう。