2023春のマイフェイバリットアルバム

春ですね。

マスクを取って笑える季節になりました。

年明けから聴いていた音楽です。

まずは、シルヴァーナ・エストラーダ。

2022年に出ていて、たまに聴いてたのですが、

ある日この曲が流れてきて、その美しさに気づきました。

良さが染みるまで、半年以上かかってしまいました。

若干25歳のメキシコのミュージシャンです。

このアルバムでラテングラミーの新人賞を獲りました。

弾いているのはメキシコのクアトロという4弦楽器。

発声がどこか民謡的な独特なテクニックがありますが、

曲もアレンジもシンプルかつ秀逸で、

しかも情感が溢れ出ていて、あんまり素敵で、歌詞が読みたくなって、

たぶんスペイン語で歌ってるんですが、翻訳ソフトで読んだら

情熱的な愛の歌が多いようでした。

サム・スミス。

これまであまり聴かなかった人ですが、

この新曲で好きになってしまいました。

トランスジェンダーのキム・ペトラスを迎えて、

曲のエネルギーが素晴らしいですよね。

全体的に、ちょっと吹っ切れた感じが聴いていて伝わる。

去年出たこのライブ版もフェイバリットですね、

過去のヒット曲がアレンジで化けています。

本人も新作のテイストを入れたと言っていますが、

けばけばしさ、大げさ、ゴスペル風になっています。

断然こっちのアレンジが素晴らしい。

パラモア。

全英1位。

2010年代のロックの冬の時代が嘘のように

チャートがロック色になってきたこの数年でも

出色の名盤と言われています。

このアルバムのリズムはタイトでカラフルで、

ほんとにきもちいい。

個人的には、聴いてると耳が勝手にレディオヘッドの

『OK COMPUTER』『KID A』の残響や残り香を探してしまい、

自分の耳の「ロック」は良くも悪くも20代にリアルタイムで熱狂した音に

けっこう固定されているのだな、更新し続けたいな…と感じてしまいました。

ネイト・ウッド。

まずはこのビデオを観てください。

ひとりで楽器を全部、アルバム全部演奏していますという

マルチプレイヤーはたまにいますが、

それはあくまで楽器を弾き分ける多重録音。

このひとは自分で同時に複数の楽器を弾くタイプ。

それだと今はタッシュサルタナがすぐに思い浮かびますが、

これはループ(音の循環)を使っているので、

いわば過去の自分と共演しているわけです。

ネイトさんは、同時に自分で弾いているわけで、

表現としては制限も多いと思うのですが、

それを鬼のようなテクニックで独特のグルーブに昇華しています。

映像を観ながら聴くことで音楽の持つ身体性が伝わって、魅力が増しますね。

ネイトさんが共演している音源のベストといえばこのティグラン・ハマシアンのライブ。

このライブは永久保存版です。

初めて観たときの衝撃は忘れることができません。

全然違うけど、自分の時代にもキース・ジャレットに匹敵する

ピアニストが現れてくれた…と思いました。

このドラマーがネイトさんです。

次はK-POPに詳しい妻に教えてもらった音源。

音はマイケル・ジャクソンからのネーヨーとダフト・パンクみたいなんですが、

とても良くできています。

モノマネではなく、

韓国はあの時代の音楽が本当に血肉化しているのだと感じます。

2年前のアルバムですが、全体を通してクオリティが高く、

気持ちよく聴き通せます。

クレメンス・クリスティアン・ピュッチュ。

ドイツの作曲家、演奏家。

これは良いです。

アルバムのオープニング、最初のメロディから名盤。

感覚的にはジャズを聴いている感じ。

レビューを読むと、キース・ジャレット的だとか、

ライル・メイズ的だとか言われてますね。

付け加えるならば、よりヨーロピアンジャズ的な感じです。

ライブハウスじゃなくて、コンサートホール的な感じです。

アピールする層は広いと思うけれど、

ジャズ・ミュージシャンでもなく、

映画のテーマソングでもなく、

届きにくい立ち位置ではあるので、

もっと多くのひとに聴かれて欲しい。

タル・マシアハのライブ盤。

これは全曲音源の映像あります。

これは1曲目のもの。

春にアルバムが出て、

昨年末にこのライブ盤シングルが出たのですが、

シングルの名前が木の下の演奏で、

実際に木陰でこうして演奏している感じと、

ライブのジャケ写も含めて、シングルの方が惹かれる。

晴れた日に、外で、音楽と笑顔。完璧。

2021年の音源ですが、この冬に聴いたので。

まずはこのMVを。

パッと聴くと、めちゃくしゃかっこいいオルタナティブ・ロックのSSWみたいな印象ですが、

現代音楽家のキャロライン・ショウが打楽器集団のソー・パーカッションとの共演作。

アルバム通して聴くと、1曲1曲のクオリティに圧倒されます。

緊張感がありつつ、安らぎのある、

パーカッシブかつ人間味に溢れた、

まさしく音楽である音楽。

とても有名な方らしく、グラミーやピューリッツァなどの賞も取ってます。

私が知ったのは、カニエ・ウェストのパフォーマンスに出ているのを見かけたことでした。

カニエの嗅覚というか、有能なひとの活用の仕方はさすが。

キャロラインさんは、ボーカルグループもやっており、

これなどを見ると、たしかにゴスペル的なカニエが好みそうな

演劇的で生々しくキレのある音圧を感じます。

共作者のソー・パーカッションもとても素晴らしいです。

10年前のNPRの映像。

キャロラインさん周りは名盤がザクザクあるので、掘りがいがあります。

未聴ならばぜひ。

シングルばかり出していたベーシストのダッチ・ウィリアムズ

のアルバムがついに出ました。

しかも2枚。

アルバムごとに、メンバーがざっくり分かれている。

あと、エレキベースか、アップライトベースかでも結構分かれている感じ。

曲の雰囲気は、曲ごとにがらっと変えてくる。

なんか、アイデアと演りたい曲が止まらない勢いを感じます。

オープニング曲。

かなりザ・シー・アンド・ケイクっぽい感じ。

過去のオマージュをしつつも、

音楽の強度の質は高いところを保っていて、

散漫な感じは受けない。

ちなみに、アルバムが2枚でた翌週に、新作のシングルを出してます。

勢いがすごい。笑。

ニア・アーカイブス。

聞き飽きないドラムンベース。

ジャングルやドラムンベースは好きですが、

曲の雰囲気に匿名性が強いというか、

ジャンルとして好きという感じで、

あまりアーティストを意識しなかった。

ニアさんは歌心もあり、

トラックにも落ち着きがあって、

もちろんドラムンベースらしいたのしさもあって、

ごきげんな佳作です。

最後に、この春ベストに印象に残っているパフォーマンス。

2023年2月のグラミーのエンディング、DJキャレドのパフォーマンス。

ジェイ・ジー、リック・ロス、リル・ウェイン、ジョン・レジェンド、フライデイというメンツです。

原曲は打ち込みですが、これは生ドラムで、リズムがすごい。

ずいぶんながいあいだ、

DJキャレドの凄さがいまいち腹落ちせずに過ごしてきましたが、

このパフォーマンスはなんども見返し、

そのメッセージ、演奏に心から感動しました。

DJキャレドがいなければ作れないということもわかりました。

と同時に。

ヒップホップが普遍的な表現になり、

20世紀のミュージシャンがレジェンドになり、

21世紀には表現の形がとてつもなく広がり、そして、

爛熟しきったように感じるパフォーマンスでもありました。

誤解を恐れずに言えば、ヒップホップという表現の広がりが

ほんとうに豊かに広がって、ある意味で天井に達した感すら覚えます。

それをリアルタイムで見て感じることができたという意味でも、

印象深いパフォーマンスでした。

でも、ぜったいに誰かがまたその天井を突き破ってくれるわけですから、

その日が今からたのしみです。