映画「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」レビュー

香港のポップスターデニス・ホーのドキュメンタリー映画

ビカミング・ザ・ソングを観てきたのでレビューします。

内容に触れてますので、あらかじめご了承願います。

この映画のことはまったく知らなかったのですが、

たまたま友人が観に行くときに、時間が空いていたので一緒に行きました。

上映場所はコザのシアタードーナツ。

「主戦場」を観に来て以来です。

相変わらず良い雰囲気。

映画は、デニス・ホーの生まれてから、

ポップスターになり、さらに民主活動家になっていく過程を、

香港の政治的状況と合わせて追っていくドキュメンタリーです。

みどころはふたつ。

ひとつ目は、デニス・ホーのかっこよさ。

このひとは、とにかくかっこいい。

最初はどこにでもいそうな普通の少女なんですが、

いろいろな出来事を経て、それが凛とした強いたたずまいにあらわれていきます。

努力を重ねてポップスターになり、師事していたアニタ・ムイを亡くし、

アニタ亡き後のポップスターを背負い、

立法のために同性愛者としてカミングアウトをし、

香港の政治運動に身を投じ、逮捕され、弾圧され、

それでも立ち上がり、歌い続け、国際社会へ訴え続けることを止めない。

その生き様や背負っている覚悟、周囲のひとの愛が内からのちからとなり、

ステージの上の彼女はほとんどマンガかゲームの主人公に見えます。

でも、地に足が着いたかっこよさなんですね。

わたしたちと同じ人間としての弱さ、

失うことや奪われることで傷ついている、

弱いからこそ強い、神々しいと言いたくなるような、

そういうかっこよさです。

生まれ年が同じなので、わたしにとって同世代の星のひとりだと思いました。

これからもどういう歩みをしていくのか、見守っていきたいです。

見どころのふたつめは、やはり、デニス・ホーを通してみえる香港の政治状況です。

おなじ香港の雨傘運動の中心となったジョシュアウォンを取り上げた

Netflixのドキュメント「ジョシュア 大国に抗った少年」からも、

香港の人権弾圧と社会運動の状況を知ることができます。

わたしが映画をみて、知ることしかできないとしても、

知ることは圧倒的に大切です。

シアタードーナツでは、館長の宮島さんの短い解説が映画の前後にあり、

なぜこの映画を上演したかったのか、香港と沖縄についての話があったので、

それはぜひ映画館で聞いてほしいです。

印象に残ったシーンは、ペンキをかけられるところと、デニス・ホーの涙です。

インタビューを受けている最中に後ろから赤いペンキをかけられるのですが、

堂々と、冷静に「はあ?」みたいな顔をしているんですね。

液体をかけられたら恐怖もあると思いますし、

混乱もすると思うのですが、彼女はまったくたじろがず、

冷静なままで怒りと有効な反応を考えているように見えます。

強いなあ、人前に立っているときは孤独を感じるだろうな、と思います。

それからデニス・ホーが涙を流すシーンです。

めちゃくちゃ強いひとですが、人前で歌うときに涙を見せます。

戦っているものや背負っているものがあり、

表現者として歌うときにあふれる涙は、心を打ちます。

「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」は、

2月16日まで、コザのシアタードーナツで上映中です。

感動したあとは、おいしいビールを飲みました。

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