社会福祉法人の計算書類で、最終補正予算額と決算額が同額の場合があります。
不思議な印象を受けます。
予算超過をしてはいけない、という考えに基づくのかもしれません。
予算超過と軽微な範囲についてまとめながら、予算超過をしない方法を考えてみます。
モデル経理規程における予算
社会福祉法人は、予算が不足したまま支出がされないよう、
不足が生じる場合には、予備費や流用、補正などの方法が定められています。
モデル経理規程には、以下のようにあります。
この規程には、「予算執行中に」とあります。
ということは、補正予算は、4月1日から3月31日の期間中に
開催される理事会で組まれるものとなります。
運用上の留意事項における予算
しかし、いわゆる「運用上の留意事項」には、
予算を超過(乖離)しても良い場合についての記述があります。
ただし書きに、年度途中で補正予算を組むけれど、
法人運営に支障がない軽微な範囲の乖離はしても良いとあります。
この「軽微な範囲」について、以前のQ&Aでは以下のように書かれていました。
軽微な範囲の具体例として、決算時に発生した予測できないものとあります。
それが具体的に何かは軽々しく書けませんが、
3月31日に年度の終わった時点では収支が確定しておらず、
それから5月の決算理事会に向けて確定していく部分はあるわけです。
大切なことは、「適正な予算管理のもとで」とあることです。
適正な予算管理がなければ、当然超過は認められません。
決算における予算超過
計算書類における決算と予算の乖離について、
社会福祉法人会計基準には以下のように述べられています。
決算額が著しく予算を超過(乖離)しているなら、理由を書けとあります。
著しい乖離は、本来はあってはならないわけですが、
乖離しているなら理由を書く。
でも、著しくなければ=軽微な範囲であれば、理由もいらないとも読めます。
最終補正予算の考え方
上記の決算と補正予算に関する規程から、私が感じたことを書きます。
まず、補正予算は、年度内の3月31日までに組むべきです。
これは当然のようですが、5月の決算理事会で、
前年度の最終補正予算を議案にあげている法人もあると思います。
それは、規程に反していますし、そもそも意味がありません。
それから、最終補正予算をなるべく正確に組んだとしても、
補正理事会の時点で決算の数字が確定していない限り、
乖離を0円にすることはむずかしいと思います。
超過しないように、ちょっと高めに補正予算を組むという考え方もありますが、
予算は正確に組むべきだとも思います。
正確な予算に対する乖離で、決算に伴う軽微な範囲であれば、
特に理由を付す必要もなく、認められると主張することもできると思います。
ですが、決算が予算額を超過していると、各種監査での指摘が気になります。
補正予算は理事会決裁であり、理事長が勝手に書き換えるわけにもいきません。
例えば次のような方法も、あるいは認められるのかもしれません。
期末の補正理事会において、
「決算において結果的に発生した法人運営に支障のない軽微な範囲の乖離に関する予算の
補正については、次の理事会において報告をするという条件付きで理事長決裁とする」
という決議を取ります。
この方法だと、決算と同額の最終補正予算とすることができます。
繰り返しになりますが、
前提として、適正な予算管理がされているということが、大切です。
適正な予算管理がなければ、方法がどうであれ、
法令に則っていることにはなりません。