沖縄県に緊急事態宣言が出たため、
来週予定していた住宅イベントのセミナーが流れてしまいました。
税金の話の合間に話そうと思っていた、住宅ローンの金利の話を書いてみます。
住宅ローンは固定金利・変動金利どっちが良い?
住宅に関するお金で関心が高いのは、住宅ローンのことです。
特に、固定金利と変動金利については、どちらがよいのか、みなさん悩むところです。
わたしはローンの専門家ではないので、税理士の視点から金利の特性を比べて、
どちらにどのような利点があるか考えてみました。
個人的な結論としては、
お金に余裕があるなら変動金利、
余裕がないなら固定金利、
です。
理由を説明します。
固定金利のメリット・デメリット
まず、話をわかりやすくするために、ざっくりとメリットとデメリットを見てみましょう。
ちなみに、固定金利はずっと金利が変わらない(そのかわり金利が高い)借り方で、
変動金利は金利は低いけど定期的に金利が変わる借り方です。
固定金利のメリットは、
◎金利が変わらない
➡「毎月の返済額」が変わらない
ことです。
固定金利のデメリットは、
✕金利が変動より高い
ことです。
結果、固定金利の特徴は、
「利息=総返済額は高めだが、リスクが無い」
ということになります。
借りた瞬間に、借り終わるまでの毎月の返済額が確定するわけです。
変動金利のメリット・デメリット
変動金利のメリットは、
◎金利が低いこと
です。
変動金利のデメリットは、
✕金利が上下すること
➡「返済総額」が上下すること
です。
結果、変動金利の特徴は、
「金利が上がらなければ、総返済額は安くなる。
金利が上がれば、返済総額は高くなる。
メリットだけでなく、リスクも負わなければならない。」
ことです。
変動金利を選ぶひとが6割。人気の理由は?
変動金利が人気です。
なぜでしょうか。
まず、実際に借りるときに適用される金利がとても低い商品が増えています。
高いより安いほうがいいですよね。
金利が1%を下回ると、さらに得が増えます。
住宅ローン控除が年末残高の1%を控除してくれるため、
金利が1%を下回っていた場合、
借金をしている人のほうが、借金をしていない人よりも儲かる
(=はらった利息よりも多くの税金が戻ってくる、
借金があるおかげで、16万利息を払ったら、税金が30万戻ってきた、
差し引き14万儲かった!みたいな感じ)
といういびつな事態が発生しているためです。
早ければ来年にも解消するので、無視して良いです。
これについては、以前ブログにも書きました。
また、YouTubeなどを見てみると、固定金利で借りるなんてあり得ない、
という論調の話を多く見かけるので、その影響も大きいように感じます。
変動金利は、この20年間くらい、低い利率で安定していますし、
もし、金利が上がっても、条件変更や借り換えをすれば、
損は避けられるという考え方もあるようです。
実際のところ、総返済額はどうなるのか。
では、実際の金額の違いはどの程度あるのでしょうか。
単純化して考えてみましょう。
たとえば、3000万円を35年ローンで元利均等で借りた場合を考えてみます。
固定金利で借りた場合、総返済額が3770万円、利息の総額が770万円だとします。
これは借りたときに確定します。
変動金利で借りた場合は、あくまで予測しかできません。
もし35年間、借りた時の金利以下の利率が続いたら、利息は300万円程度で済むことになります。
しかし、5年後に金利が2%あがったら、利息は1000万円を超える可能性があります。
なので、変動金利がうまく行けば、新車1台分くらい儲かる可能性はあるけど、
うまく行かなかったら、新車1台分、もしくはそれ以上損する可能性もある、みたいな感じですね。
固定金利は基本的にメンテナンスは不要ですが、
変動金利は状況を踏まえて、対策を取る手間や知識が必要になってきます。
つまり、変動金利を選ぶということは、新車1台をかけたバクチと言ったら
言い過ぎですが、そういう側面はあるわけです。
そうだとしたら、バクチが打てるのは、お金に余裕があるひとです。
車1台分なら損しても耐えられるし、儲かる可能性があるなら投資としてやる価値はある
と考えるならば、変動金利はおすすめできます。
あるいは、夫婦共働きで、返済期間も短いし、いざとなればふたり分の収入をあてて
繰り上げ返済できるから大丈夫みたいな場合もおすすめできます。
しかし、お金に余裕がなく、もし10年後に金利が上がったら、
住宅を売らないといけなかったり、生活が破綻してしまうならば、
固定金利でリスクをゼロにするのがおすすめです。
固定金利の方が、総返済額が高くなる可能性はあるとしても、
壊滅的なリスクが避けられることを優先するわけです。
先のことはだれにもわからない、という前提
変動金利をススメている意見に共通しているのは、
「今後も急激に利息は上がらない」と見込んでいることです。
専門家がいろいろな情勢を分析し、そう考えています。
わたしは専門家ではないので、将来の金利情勢はわかりません。
先のことはわからない、というスタンスです。
ある程度あきらかな事実として、過去に目を向けてみましょう。
まず、現在の金利はとても低い、ということは言えると思います。
今月の変動金利の最低金利は0.3%台です。
固定金利も1%台なので、低いです。
20年以上さかのぼれば、固定で3%台、変動で6%台の時代もありました。
金利は1%違ったら、払う金額は500万とか変わってくる可能性があるので、
わずかな違いも大きいです。
だから変動は安いと感じます。
でも、今の固定金利も、過去と比べれば安いのは事実です。
借りすぎはこわい。
金利が低いと、ギリギリまで借りすぎてしまうという危険があります。
金融機関は、たくさん貸した方が儲かりますし、
住宅ローンはリスクが低い商品なので、借りられる限度まで貸してくれます。
(今はコロナで慎重になっているという話も聞きます)
住宅メーカーも、良い家を建てたいし、わたしたちも良い家に住みたいです。
だから、ついつい借入金額が大きくなりがちです。
あたりまえですが、自分の返済するチカラ以上に借金をし過ぎるのは、よくありません。
借金は悪いことではありません、手元のキャッシュに余裕が生まれるので、良いことです。
こわいのは、「借りすぎ」です。
なぜなら、破綻する可能性があるからです。
コロナで住宅ローン破綻が起こったのは、コロナで仕事が減って収入が減ったために、
毎月の返済ができなくなったからです。
借金の金額は、余裕を持って返済できるくらいが良いということです。
固定だと高くて借りられないけど、変動なら借りられる、という場合には、
もともと今の利息は低いのですから、借りすぎの可能性を疑ってみましょう。
借入額ありきではなく、返済額を基準にして借入額を下げれば、
固定でも借りられるのではないでしょうか。
以上、あくまで税理士からみたひとつの意見です。
実際には、固定・変動だけではなく、返済期間や頭金、プランの併用など、
いろいろな要素があって、判断は複雑になるかと思います。
家という買い物を通じて、自分のお金に関する価値観を棚卸しできるのが、
住宅ローンのメリットです。
正解はありませんが、悩んで決めて、お金に対する見方を良い方に変えていきましょう。