日本では、個人事業主同士の夫婦が、相手に仕事を発注しても、
夫婦のあいだの売上と経費は、なかったことになります。
なぜでしょうか。
夫婦間での仕事は税務上なかったことにされる日本の現状
夫婦の共働きは当たり前になりました。
同級生でも、共働きでない夫婦はほんのひと握りしかいません。
結婚しても仕事を続けている夫婦、
結婚・出産などを機に、どちらかが転職したり、
フリーランスになって働いている夫婦ばかりです。
わたしは税理士(=フリーランス)です。
妻は弁護士ではありませんが、妻が弁護士(=フリーランス)だったと仮定します。
税理士なので、妻の弁護士事務所の税務申告を受けますよね。
妻だからといってごまかさずに、ほかのお客様と同じように仕事をして、
同じ額の報酬を受け取ります。
この「妻が払った報酬=弁護士事務所の経費」と
「夫が受け取った報酬=税理士事務所の売上」が、
日本では認められません。
ようするに、税理士である夫は、
妻に対する仕事なんだから、タダ働きしなさいという意味です。
これは、裁判で争われて、最高裁で出た結論なので、本当です。
ふたりが恋人だった場合は認められるんですけどね。
結婚して同じ家庭になると、認められません。
なぜでしょうか。
夫婦間の仕事が認められていない理由
夫婦間の外注が認められていない理由は、
戦後、お店を家族で経営することが一般的だった頃に、
「家族への支払は「仕事の対価」なのか「養っている家計費」なのか
区別があいまいなのに、家族への支払を経費として認めると、
ずる賢いひとが「税逃れ」するから」
ということで決められた法律が、残っているからです。
たしかに、ほんとうはお手伝い程度にしか働いていない家族に、
お給料を100万円くらい払えば、その世帯全体の税金は安くできます。
ですが、税逃れではなく、ちゃんと働いている家族に対する給料までが
認められなかったらおかしいですよね。
唯一認められている例外は、青色申告の特典としての専従者の給与だけです。
共働きや兼業が当たり前となってきた今、
上記の税理士と弁護士のような事例は、
たとえばデザイナーの妻に仕事をお願いする場合など、よくあります。
給与も、専従していないと認められないのも変です。
計上できて当然の経費まで認められないならば、
法律が時代に合っていないわけです。
今のところ、解決方法は、
① どちらかが法人化する
② 夫はやめて他人に頼む
③ あきらめて夫がタダ働きする
くらいしかありません。
知らずに夫婦間で経費を計上しているひとを散見します。
立場上、認められないとお伝えしますが、
はやく法律を変えてほしいものです。