中古車や中古マンションを途中で業務用にした場合の減価償却の計算方法

中古で自動車を買って、私用でしばらく使っていましたが、

個人事業を始めたのでこの車を事業用で使うことにしました。

あるいは、

中古でマンションを購入し、しばらく住んだあと、

転勤や新居を建てたので、古いマンションを賃貸することにしました。

こういう事例をしばしば目にします。

税務的には、「中古資産を非業務用から業務用に転用した」と言えます。

この場合、確定申告での減価償却費の計算が非常にややこしくなるので、

なるべくわかりやすく書いてみます。

なお、減価償却の基本の計算式の

「取得価額 × 耐用年数と償却方法に応じた償却率」

はわかっているよ~という人向けになります。

中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却の計算方法

計算は、2つに分かれているとイメージすると理解しやすいです。

まず、

「中古資産のその年の減価償却費」

の計算があります。

それだけだとラクなのですが、私用で使っていた間も資産の価値が減っています。

これを減価の額と言い、これを考慮して、

「業務で使うことにした日の資産の金額」

も計算しないといけません。

具体的な事例で考えていきましょう。

■中古の普通自動車

■2019年1月15日に新車登録されたもの

■2020年5月10日に中古車としてコミコミで200万円で購入

■2021年4月20日から1週間のうち5日間は事業用として使い始めた

この場合の、2021年の減価償却費の計算方法。

…ややこしいけど、実際良くあることですよね。

【参考】

自動車の耐用年数:6年

自動車の償却方法:定額法

中古資産のその年の減価償却費の計算方法

自動車は中古です。

中古の場合、耐用年数を合理的に見積もるのですが、

簡便法があるのでそれを使うことが多いです。

まず、中古で購入するまでの期間(=経過年数)を出します。

2019年1月15日から2020年5月10日→1年3ヶ月26日(1月未満は切り上げて月数に変換)→16月

 ※ここには私用の期間(2020年5月10日から2021年4月20日)は含まれない

次に、転用後の耐用年数を出します。

転用後の耐用年数の算式は、

(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)

です。

数字を当てはめてみると、

法定耐用年数6年→72月-経過年数16月+経過年数16月×0.2=59.2月→4.93年→4年(1年未満の端数を最後に切捨て)

新品の車だったら6年かけて費用にするけど、16ヶ月誰かが乗ってた中古車だから

簡便な計算で4年と見積もったよ、ということです。

 ※法定耐用年数が全部経過している(普通自動車なら6年以上経った中古車)場合には計算方法が異なります

 ※計算結果が2年未満だった場合には、2年になります

耐用年数が決まったので、減価償却費を計算します。

計算式は、

取得価額×償却率×その年の業務に使った月数/12月

です。

数字を当てはめてみると、

200万円×0.25(定額法4年の償却率)×9月/12月=375,000円となります。

 ※2020年5月取得なので定額法を使います

 ※4月20日から12月31日までは8ヶ月11日ですが、1月未満は切上げで9ヶ月となります

そして、最後に家事按分をお忘れなく。

事業割合は合理的な方法をご自身で定めてください。

今回は、1週間のうち5日業務使用なので、

5日/7日=0.7142→71%を事業計上するとして、

375,000円×71%=266,250円になります。

やれやれですね。

業務で使うことにした日の資産の金額の計算方法

今回は、中古資産を買っただけでなく、私用から転用しています。

この私用で使っていた期間の償却費(=減価の額)の計算方法が、

上記の中古資産の方法とは違うんですね。

それを踏まえて、取得価額から減価の額をひいて、仕事でつかうことにした日の資産の金額を出します。

そこまでやって、はじめて資産の未償却残高=減価償却ができる金額がわかるわけです。

具体例で置き換えてみると、

仕事で使うことにした日の資産の金額=2021年4月20日における車の未償却残高を指します。

やってみましょう。

まず、中古車を買ってから私用で使っていた期間(2020年5月10日から2021年4月20日まで)に

目減りした価値(=減価の額)を計算します。

計算方法は、

取得価額×0.9×(資産の耐用年数×1.5倍の耐用年数に対応する旧定額法の償却率)×私用で使っていた年数

です。

 ※0.9をかけているのは、旧定額法で計算しているからです

 ※非事業用資産の償却費の計算は、旧定額法で行うことが決められています

カッコの中がわかりにくいのですが、私用で使っていた期間については、

業務用の1.5倍長持ちするイメージで償却している感じです。

上記の事例に当てはめると、自動車の耐用年数は6年だけど、6年✕1.5=9年(1年未満切捨)となります。

数字を入れると、

中古車の取得価額200万円×0.9×0.111(9年の旧定額法の償却率)×1年=199,800円

となります。

 ※2020年5月10日から2021年4月20日までは、11ヶ月10日です

 ※1年未満の端数は、6月未満切捨て、6月以上は1年とするので(11ヶ月10日→1年)となります

目減りした価値が199,800円なので、業務用で使うことにした日の資産の未償却残高は、

200万円-199,800円=1,800,200円

となります。

以上ですが、取得年月日や未償却残高の金額によって、計算方法は変わります。

非常にややこしいですが、やってやれないことはない、とは思いますので、

計上をあきらめないでくださいね。

減価償却費は、会計システムに条件を入れると自動計算されるからできているように見えて、

システムへの入力方法が誤っているひとが多いのがこわいところです。

なお、今回の事例は個人事業の場合です。

法人の場合には、転用ではなく、社長が会社に売ったりあげたりすることになるので、

考え方も計算も違ってきます。