去年の10月から、一部領収書が不要になったという話は聞こえてきますが、
いまいちわかりにくい電子帳簿保存法。
内容が毎年変わっており、来年も大きな改正が見込まれています。
現状とこれからを整理しておきましょう。
領収書を捨てたい。
決算申告の元となる帳簿書類、例えば請求書、領収書などは、
整理保存して、基本的には7年間保管しなければいけません。
でも、整理は面倒、保管は邪魔と感じるので、
紙の領収書を捨ててデータで保管したい。
それが電子帳簿保存法です。
ところが、実際の電子帳簿保存法は、
事前に税務署に難しい書類を書いて承認を受けて、対応する高いシステムを購入して、領収書をもらったらそれをスキャンして、7日以内にタイムスタンプ(電子印みたいなもの)をして、それから保存して、税理士が定期的に原本と照合して・・・・・・
簡素化するために導入したかったのに、ぜんぜん簡素じゃない。
大企業とかじゃなければハードルが高すぎて、つかえない制度なわけです。
というわけで、電子帳簿保存法が誕生してから20年間以上、
ほとんどにひとにとっては意味のない制度でした。
昨年の10月からちょっと使えるようになった。
状況が変わったのは2020年10月の改正から。
「電子取引(例えば、Amazonでの購入、
店頭でPayPayやクレジットカード、Suica等での購入)の場合は、
これまでは領収書などをプリントアウトして保存しなければならなかったけれど、
これからはデータを保存しておけば良いですよ。
事前の手続きも不要です。」
一般的にはそんなふうに言われています。
国税庁のQ&Aにはこうあります。
たしかに、データ保存だけで、紙はいらないと書いてあります。
「便利になったね!」と感じますが、実はこのQ&Aには続きがあります。
なに言ってるかよくわからないですね。
具体的な事例に置き換えてみましょう。
例えば、Amazonの自分のアカウントを開いて、
領収書をデータで取ろうとすると、PDFで領収書が取れます。
では、このPDFの領収書は認められるのか?
これは(1)に該当するので、「PDFにタイムスタンプを押す」か
「ちゃんと事務処理規程を備えてデータを管理している」ならば認められると書いてあります。
それなりに準備と運用整備は必要ですね。
クレジットカードの利用明細も、最近は紙は有料化したり、
紙を止めるとポイントが付いたりするので、
ネットやアプリで明細を確認しているひとが多いと思います。
このクレジットカードのデータの明細書は認められるのか?
これは(4)に該当するので、
訂正削除の履歴が残るシステムを利用していれば良いとかいてあります。
履歴が残るシステムって、たとえばクラウド会計などですね。
会計ソフトが何であれ、対応するのは時間の問題だと思いますが、
ソフトのプランや、明細データの取り込み方など、ソフトに準じないと、
データ保存の要件を満たせるかどうかがわからないくて、もやっとしますね。
決算や確定申告直前にまとめて1年分やろうとしても、データが取れないとか、
明細データだけでは使った内容が思い出せないとかで、できない可能性は高そう。
もうひとつ、活用できそうな点があります。
取引先・得意先との請求書等のやりとりをクラウドでして、ちゃんとデータを保存していれば、
紙で保存しなくてよいということですね。
最近では、請求書もクラウドサービスで作成する事業者が増えてきました。
わたしも前はMisoca、今は会計freeeで請求書を作っています。
作った請求書は、紙で出さずにデータで共有しています。
請求書は自動的に会計システムに取り込まれて保存されます。
双方に紙の書類がいっさい発生せず、保存が不要になります。
便利ですね。
以上、どれもちゃんと規程を備えたり、普段からクラウド会計を利用している事業者ならば、
じゅうぶんに活用できる内容であると言えます。
ただし、これらはそもそも紙の領収書等が発生しない取引(店頭でも領収書は受け取らない前提)の話であり、
紙の領収書を捨てていいよ、ということではありませんのでご注意ください。
2022年1月の改正は期待できるのか?
電子帳簿保存法ですが、来年1月から大きな見直しが予定されています。
領収書等については、一番下の「改正後」に概要があります。
いろいろ書いてありますが、
厳しすぎて使いづらかった要件を緩めて、使いやすくするよと。
みんなが負担なく使えて「本当に事務処理がラクになる」といいですね。
そういう意味で期待はできますが、
まだ具体的な運用の詳細までは明らかになっていないので、わかりません。
次の情報を待ちたいと思います。