個人事業主や中小法人の節税と言えば、経営セーフティー共済。
この制度、意外とむずかしいですが、理解しないと使えません。
わかりやすさ優先で、ざっくりと解説します。
経営セーフティー共済ってなに?
経営セーフティー共済は、
「いざという時に、お金が借りられる貯金」です。
この「貯金」には、おもに2つの側面があります。
① 節税
② 借入れ(倒産防止)
です。
順番に見ていきましょう。
節税のしくみ:経営セーフティー共済
節税のイメージとしては、
①毎月、自分で決めた掛け金を積み立てます
②この掛け金は「費用」になるので、そのぶん税金が安くなります。
「貯金をするだけで税金が安くなった!」
でも、払ったときに税金が安くなるものは、
受け取ったときに税金がかかるのが鉄則。
イメージとしては、
③受け取ったお金は「売上(雑収入)」になるから、
なるべく利益が小さい年に受け取った
「赤字の年に解約したら税金がかからなかった!」
つまり、
「100万円預けたら、100万円の費用」、
「100万円戻ってきたら、100万円の売上」なので、
①黒字のとき(利益が大きい年)にたくさん貯金して、
②赤字のとき(利益が小さい年)に解約する
ことで、節税するのです。
「利益が小さい年」とは、たとえば、
・景気が悪く赤字のとき、
・退職金を計上するとき(法人のみ)、
・その他、修繕や研究開発など、多額の費用がでるとき
などが考えられます。
計画性が必要ということですね。
掛け金は、毎月5,000円から20万円のあいだで選べます。
金額はいつでも変更できます。
決算月に1年分前払いもできるので、
決算月だけで最大240万円の費用が計上ができます。
なお、個人事業の場合、
掛け金が経費になるのは事業所得だけです。
不動産所得の個人事業主が経営セーフティをしても、
経費にならないので、ご注意を。
借入れで倒産を防止するしくみ:経営セーフティー共済
「経営セーフティー共済」は通称で、
正式名称は「中小企業倒産防止共済」です。
「とうさんぼう」と呼ぶひともいますね。
つまり、いざというときに
「中小企業の」
「倒産を防止する」
「保険」
なんですね。
「いざ」とは「取引先が倒産したとき」です。
「倒産を防止する」の倒産は「連鎖倒産」のことです。
たとえば、
売上代金300万円を未回収の得意先が、倒産してしまった。
渡した商品も、300万円も返ってこない。
このままでは、うちも資金がショートして倒産してしまう。
中小企業は資金力がないので、
このように倒産が連鎖しやすいわけです。
そんな時、経営セーフティー共済に入っていれば、
お金をすぐに借りられます。
もし100万円貯金していたら、
10倍の1000万円がすぐに借りられます。
それが経営セーフティー共済の本来の目的です。
しかし、そんなことはしょっちゅう起こらないので、
ほとんどの加入者は、副産物の「節税」を主な目的としています。
その他の良いところ:経営セーフティー共済
取引先が倒産していない場合でもお金が借りられる、
「一時貸付金」という制度があります。
ざっくり、預けているお金の95%くらいを借りられます。
1年後に一括返済、利息は0.9%です。
国の機関がやっており、安心です。
また、40ヶ月未満でやめると元本割れしますが、
40ヶ月続ければ、元本がもどってきます。
掛止めして、そのまま預けておいて、
好きな時に解約ができます。
解約後も何度でも再加入できます。
いまいちなところ:経営セーフティー共済
取引先が倒産した場合はお金が借りられますが、
「夜逃げ」だと借りられません。
むずかしいかもしれませんが、夜逃げの場合も
フォローしてほしいところです。
取引先の倒産時は掛け金の10倍を借りられますが、
その際に、掛け金の1/10は「没収」されます。
1000万円借りたら、100万円の掛け金が没収=利息100万円です。
利率に換算したら、銀行より高くなります。
そのため、実際の倒産による借入れをする加入者は、
極端に少なくなっています。
しかし、借入れ手続きのスピードはとても早く、
「連鎖倒産の防止」という目的を果たすので、
それでもメリットはあります。
掛け金に利息は付かないので、運用益はまったくありません。
掛け金の上限が800万円なので、それ以上は積み立てられません。
開業設立初年度は加入ができません。
経営セーフティー共済が合っているひと
経営セーフティー共済のしくみを理解し、
掛け金と解約のタイミングを合わせられるひとです。
具体的には、
・退職金の支給予定がある法人
・急に利益が出てしまった個人
・建物の大規模な修繕予定がある法人・個人
・連鎖倒産のリスクに備えて800万円以内の貯金をしたい法人・個人
などが考えられます。
あまり大きな声では言えませんが、
時短協力金バブルのひとも使えるかしら。
もちろん理解したうえで、ですが。
法人の経営セーフティー共済の科目は ✕費用ではなく ○資産でしましょう。
最後に経営セーフティー共済をしている法人の処理について、
とても大切なことです。
掛け金は「保険料(費用)」にしないで、
「保険積立金(資産)」にしましょう。
理由は、
①損益計算書の利益が大きく見えるから
②貸借対照表の状態が良く見えるから
③リスク管理をしていると伝わるから
④金融機関の評価がよくなるから
です。
理由は、簿記の話になるので、割愛します。
なお、この方法をとった場合には、
申告時に税理士に別表で余分な作業をしてもらう必要があります。
逆に言えば、このような処理をすすめてくれる税理士は
支援先にとって安心できる税理士だと思いますよ。
別表10(6)の「付け忘れ」を嫌ってやらない税理士もいますが、
それは税理士側の問題なので、ちょっと意味がわかりません。
わかりやすさを優先して、貯金に例えて説明しました。
興味のある方は、金融機関や商工会、青色申告会や税理士などに
相談してみてくださいね。