ゴスペルのマイフェイバリットアルバム

ゴスペルしばりでマイフェイバリットを書いてみたかったです。

ゴスペルというと『天使にラブソング』をみたいな、

体育会系の部活みたいな音楽というイメージがありますが、

そういうゴスペルにあんまり興味がないので、

いわゆるゴスペルの名盤はあまり取り上げず、

ホリデーアルバムや、聖歌などのスタンダード曲集や、

ゴスペル出身のアーティスト、

曲のテーマが宗教色が強めなど、

キリストの香りがするグッドミュージックを紹介していきます。

まずは、ベーシストのチャーリー・ヘイデンが

ピアニストのハンク・ジョーンズとデュオでゴスペルを演奏したこの2枚。

アルバムの副題が

「spirituals, hymns and folk songs」とある通り、

ポピュラーな賛美歌などの演奏集です。

このアルバムは、チャーリー・ヘイデンの代表作でも良く挙げられますし、

続編のカム・サンデイの方は、

ハンク・ジョーンズが91歳のときの最後のスタジオ・レコーディング盤だそうです。

演奏は、本当に素晴らしいものです。

メロディを歌う、

音の美しさに感謝している。

自分の葬式で流して欲しいくらい。

カーペンターズのホリデーアルバムを2枚。

ホリデーアルバムの名盤は数あれど

(いつかマイフェイバリットホリデーアルバムも書きます)、

わたしにとっての永遠のナンバーワンです。

このアルバムは、実家にLPがあったので、

幼少期から聴いて育ったという刷り込み効果はあるけど、

大きくなってどれだけホリデーアルバムを聴いても、

これ以上のものはまだない。

曲も演奏も歌も良いですが、とにかく編曲が素晴らしい。

賛美歌、クリスマスソング、くるみ割り人形まで、

ごちゃまぜですがコンセプトアルバム感が強く、

最初から最後までクリスマスの幸福感があふれています。

1枚目がクリスマスポートレイトで、

2枚目は本来はカレンの死後にリリースされた

『オールドファッションドクリスマス』という

1枚目の未収録曲+リチャードの曲で、

雰囲気も似ている姉妹盤、両方良いです。

カントリーのジャンル、ブルーグラスの夫婦デュオ。

ゴリゴリのゴスペルカントリーですね。

女性と男性の声のハーモニーが

調和していて美しい。

カントリーゴスペルは、いわゆるゴスペル色が薄く、

逆に聴きやすいとも言えます。

ジョーイさんは残念ながら亡くなって、

ロリーさんは音楽を続けています。

ジャズギタリストのウルフギャング・ムースピールと、

作曲家のクリスティアン・ムースピールが

兄弟名義で出したアルバムです。

オーストリアで育った今はどちらもミュージシャンとして活躍する兄弟の、

聖歌隊などの幼少の頃の家族の音楽を再演したアルバムらしいです。

元となった映像もあるようですが、詳しいことはよくわかりません。

どの曲も、始まりは聖歌隊のような音源から入ります。

このような音楽を聴いてそだった兄弟が、

ともに世界的なミュージシャンになり、

自分たちのルーツ・ミュージックを演奏しているのでしょうか。

暖かく、静謐で、スッキリとしたすばらしいアルバムです。

ロイ・ブキャナン『メシアは再び』。

ブルースギターのミュージシャンズ・ミュージシャン。

この曲は名演中の名演。

題名がメシアつまりキリストの再来で、

曲の感じと相まってなんだか不思議な説得力があります。

2:40くらいからのただのチャカチャカチャカチャカがすごい心にしみる。

ジェフベックにも大きな影響を与えたと言われました。

これとか見るとわかりますね。

…このジェフベックもヤバいですね。

ノルウェーの世界的なサックス奏者で、

キース・ジャレットヨーロピアンカルテットの一員でもある

ヤン・ガルバレクと、

男性カルテットのヒリヤード・アンサンブルがコラボして

聖堂でグレゴリオ聖歌などを演奏したのを収録したアルバム。

ECMのマンフレート・アイヒャーの企画で、

ECMで最も売れたアルバムだそう。

この頃流行っていたグレゴリオ聖歌がらみのアルバムの最高峰だし、

今聞いても最高。

パッと聴くと、ヒーリングミュージックですが、

演奏も音も最高で、永遠に聴ける名盤。

同じコラボでスタジオ盤3枚、ライブ盤1枚あって、どれも良いですが、

やはりこの最初の1枚がベスト。

このひと抜きで現代ゴスペルは語れないカーク・フランクリン。

いま、生きている伝説の音楽家の、今は全盛期だと思っています。

このひとがいなければ、現代ゴスペルの音楽は違っていただろうし、

このひとが他の非ゴスペルミュージシャンにゲストで呼ばれることで

ゴスペルの音楽的要素がどれだけ一般の音楽に広がったか。

2020年に出た現代ゴスペルの最大の名盤。

音楽好きのたくさんの人がこの年のベスト・アルバムに含めていましたね。

ピーター・コットンテイル本人は宗教的なアルバムとは言っていないのですが、

聴いてのとおり、いわゆるゴスペルミュージックと、

キリスト教のモチーフが土台になっています。

チャンス・ザ・ラッパーのチームの一員でもあり、

著名なプロデューサーでもあり、

2010年代の豊穣な音楽の集大成的な音でもあります。

ゲストもカークを始め、チャンス、ジャミラウッズ等。

音楽にこめられた喜び、高揚感、肯定感もゴスペルらしい。

ゴスペルが目的なのではないかもしれませんが、

現代ゴスペルミュージックのひとつの時代の音楽的な到達点。

プリンス。

一時期、名前を変なシンボルマークにしていたプリンスが、

(当時は仕方なく「元プリンス」とかって呼んでましたよね…)

名前を「Prince」に戻して出した1枚目のアルバム。

当時、プリンスが子どもを亡くしたことや、

プロテスタントからエホバの証人に改宗したことなどで、

内容が非常に宗教的になったと言われるアルバムで、

一般的には評判はあまり良くない。

でもわたしはいちばん好きなアルバム。

このアルバムから『musicology』『3121』と、

プリンスの第2期の黄金期の幕開けでもある。

エホバの証人がらみでゴスペルというと色々批判もありそうですが、

私はキリスト教が「異端」を強調・排除する側面があることを

宗教としてのキリスト教の弱さだと思っているので、そういう批判は気にしません。

立ち位置的にボブ・ディランの黒歴史呼ばわりされている

キリスト教三部作と似ているところもあり、過小評価されているが、

べらぼうにグッドミュージックであることは間違いない。

ディランの黒歴史と状況的に似ているといえば、

近年のカニエ・ウェストのゴスペル。

このアルバム出たとき、カニエを好きなひとは

これを自分にどう納得させるか苦労していた気がします。

記憶があやふやなので歪曲しているかもしれませんが、渋谷陽一さんが、

「キリストを賛美しているというより自分の言いたいことが出すぎていて、

いつものカニエだ」と言ってて、なるほどそうかもと思いました。

音像は近未来ゴスペル的なのに、聴いてもゴスペル的とあまり感じない。

ただ、音楽的にはさすがに見事なんで、

これもひとつのゴスペルがらみの作品としてたのしく聴けば良いと思います。

これはネタっぽいんですが…

まっとうなゴスペルのアルバムを出しているグループなのですが、

日本のアニメのカバー集も出していて、聴いたらこんな感じで、

冒頭の熱唱に爆笑しました。

宗教を抜いたいわゆるゴスペルの様式がわかって面白いですね。

無信仰とゴスペルという観点では、この映画がとてもわかりやすかったです。

無宗教なのに、ゴスペルを好んで歌って聴く日本人がテーマのドキュメンタリー。

私は日本のゴスペルが苦手なので期待しないで観たのですが、見事な内容でした。

ネタバレになるので具体的な内容には触れませんが、音楽映画ではなく

ドキュメントとして複数の視点を映画的に取り入れており、

鑑賞者の考え方に良い波紋を広げてくれる、

クリスチャンの人も、ノンクリスチャンの人も納得できる映画です。

パソコンから500円で観られますよ。

PJモートン。

マルーン5のキーボーディストの方ですね。

ゴスペルの名手たちをゲストに迎えた見事なアルバム。

ポップなアレンジで非常に聴きやすい。

さっきのピーターさんのアルバムもそうですが、

一般的な音楽ファンからの好評を得ています。

それって大切なことですよね。

例えば、非ゴスペルミュージックでは歴史的な名盤を残している小坂忠さんとかには、

ゴスペルであっても一般の音楽ファンからも評価されやすい形での優れた作品も

作って欲しかったです。

教会の音楽は、演奏の目的が違うのはわかりますが、

ノンクリスチャンが聴くと引いてしまうような、

聴く人を選ぶ音楽になっている場合も多いと感じます。

そいういう意味でも、これは聴く人を選ばない非常に優れた作品。

今回取り上げた中でもっともストレートなゴスペル、

アンドレ・クラウチの有名ライブ盤。

喜びとパワーが炸裂するライブ。これはアガる。

文句のつけようがない名作。

アンドレさんは牧師でありながら、

音楽プロデューサーとしても超一流であり、

マイケルのこの曲のプロデュースにも参加している。

最高。

グラミーも受賞した非常に優れた面白い企画もの。

クラシックの宗教曲、いわゆるオラトリオの中で、

バッハの受難曲と並んで最も有名な

ヘンデルのメサイア(=メシア、キリストのこと)があります。

ハレルヤコーラスが含まれる曲です。

アカペラグループのテイク6にいたマービンさんが、

このメサイアをモチーフに、

スティービー・ワンダー、ダイアン・リーヴス、パティ・オースティン、

チャカ・カーンなどなどを迎えて、

ブラックミュージックの文脈で再構築したアルバム。

原曲の要素を織り交ぜつつ、音楽的に幅広く豊穣であり、

アレンジも絶品な超一流の料理のような音楽。

聴かずに死ぬのはちょっともったいないです。

最後に、教会音楽を。

オルガン奏者の松原葉子さんの宗教曲演奏集。

1曲目、単音で奏でられるあまりにも素朴なメロディに驚くが、

音が心の深いところに染みわたる。

こどもが弾く教室の足踏みオルガンのようでいて、

音楽的にも、表現としても、聞き飽きることがない。

御本人は難病を患っているが、

そういうこととは関係なく、

どこまでも透き通り天にあがっていくようなすばらしい演奏。

というわけで、極私的ゴスペル特集でした。

キリスト教は日本だとお硬いイメージ、

嫌なことを強制する神というイメージがあるかもしれませんが、

実際の信仰はこれらの音楽のように、楽しく自由なものなのです。

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